無料ブログはココログ

イベント情報

図書紹介

  • 図解でわかる心理学のすべて

« 勉強して「いただく」のではない | トップページ | お薬に頼る前に »

寓話の象徴と中世社会学

ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界

今年も6月には恒例の「絵本フォーラム」が開かれると思いますが、ふぁすの絵本フリークたちがユングと結び合わせてゾクゾクスリルを楽しむグリム童話に「ハーメルンの笛吹き」という物語があります。

こだわり派のフリークたちは、数々出版される中にも絵本の挿絵家の絵柄にもうんちくを傾けこの画家の絵本が一番と論議するほど、物語は広く知られて童話としての作品数も多いようです。

ところが

今回娘が学校の図書館で借りてきたのは、タイトルこそ童話と同じでしたが、内容は「中世ドイツ民族史」の論文調。

経済学や社会学を修めた教授が、中世経済の研究で渡欧中に寓話に触れてはまり込み、趣味と実益を兼ねてその真相を探った本格的な読み物でした。

現代のファンタジー物のゲームが好きな子どもたちは、戦士や楽師、魔術師といった中世ヨーロッパの職業に憧れさえ持っていますが、ハーメルンの笛吹き男が子どもたちを連れて消えたといわれる時代のドイツは本当に貧しい人が多くて、壮絶な時代だったということを著者が説明していました。

貴族に搾取され、一方で宗教儀式に多大な費用(宗教戦争が起きたのは当然)、差別され虐げられた人民がはけ口を求めてより貧民への差別が大きくなり、とても現代では想像できない醜い生活像が詳しく論じられていました。

ハーメルンの伝説についてはまた絵本フォーラムで聞かせてもらうとして、130人の子どもが本当にいなくなったのか、単なるおとぎ話なのか、ということと、どうしてこの話が語り継がれ、今でもハーメルンでは「音楽禁止通り」が実存して毎週寓話劇が演じられているのか。

笛吹き男は実在したらしいのですが、イエス・キリストや日本武尊のように伝説か歴史かはっきりしない存在というロマンスを感じる話です。

時代を知ると、子どもがいなくなることがあってもおかしくない、そういう時代だったようです。疫病で子どもたちがたくさん死んでしまったこととか、子ども十字軍に参加して行ったとか、東方殖民に連れて行かれたとか諸説あるそうですが、笛吹き男の象徴する意味や、子どもを失う親の思いなど、フォーラムで語り合うとそれだけでも何時間にも及びそうなとても興味ある話題です。

本書の中に、ユングの説が少し紹介されていました。ヴォータンというゲルマン神話の悪魔を象徴するのが笛吹き男だということ。庶民が傲慢になり、仕返しの恐怖を形に表したもの。

著者は、経済や社会学の専門家として、「常に政治が揺れると、経済にひずみがおき、その結果悲惨な状況に追いやられるのは子どもをはじめとした弱者だ」と現代にも通じる教訓を示していると書いていました。

史実として行方不明になった子どもたちが大勢いて、それを忘れられない親がいる。ハーメルンでは子どもがいなくなってからの年数を数える独自の暦があったと言います。

戦争や政治的な力の争いに、庶民は直接関係ないのに混乱した市場で影響を受け、その結果子どもたちの心身の健康が損なわれ、地中に消えるがごとく存在が失われていく。後悔しても遅いんだよ。

おとぎ話の深層は今年も白熱しそうですね。

« 勉強して「いただく」のではない | トップページ | お薬に頼る前に »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1019967/39917880

この記事へのトラックバック一覧です: 寓話の象徴と中世社会学:

« 勉強して「いただく」のではない | トップページ | お薬に頼る前に »